アメリカのお菓子
私はアメリカのお菓子に詳しい。
特に現地のスーパーで売っているものくらいであれば、美味しいか美味しくないかくらいは識別できる。
習い事の子供達はだいたい中学二年生くらいになるとホームスティに行くのだが、
その度、子供達がよく買って来てくれるからである。
ホームスティに行ってきた子達は、帰国して数日経つと帰国報告会というものに参加しなければならない。
その会では自分の経験を模造紙にまとめたものを展示し、発表するという場面がある。
その時、展示物として海外のお菓子を展示する子供も多い。
突然だが、リコリスというお菓子を目にしたことがあるだろうか?
見た目はゴム。
食感もゴム。
そして、味もゴムだ。
赤色の黒色があり、赤色はほんのりイチゴの味がするので少しは口にすることが出来る。
しかし、黒色は一言で味を表現するのであればタイヤだ。
タイヤを食べたことはないが、食べたらきっとそんな味なのだろうな…という代物なのだ。
ほとんど口にする者はいないが、帰国報告会で、毎年必ず面白がって試食コーナーに展示する者がいる。
そして、並べられたリコリスは、ことごとくスルーされ、並べた者は開封してしまって食べるしかないリコリスを泣く泣く持ち帰ることとなる。
あの味のことを考えると、その子供の家族に同情してしまう。
私は「リコリスなんて、アメリカ人も本当はたべないんじゃないの?」と思っていた。
しかし、そんな私の想像は大ハズレであった。
母の職場先に、アメリカ人の職員さんがいらっしゃるそうなのだが、彼女はそれをとても美味しそうに食べるのだという。
なんでも彼女のお気に入りのお菓子だそうで、帰国した際のお土産として職場で配ったらしい。
日本人ばかりが囲んだテーブルには、案の定大量のリコリスが余ったそうなのだが、彼女は「赤と黒を一緒に食べるとヤーミー」と言って、喜んで残りを食べていたそうだ。
どこをどうしたらヤーミーなのか、さっぱり分からない。
私の妹も同様にホームスティに行った。
ケチな妹だが、今回ばかりは思い切ってくれたようで、海外から配達してもらうほどのお土産を買ってきた。
「はい、これがうちのお土産だよ!」
私たち親子はワクワクして包みを開けた。
これは…リコリス。